今回は、代表的なダイエット法である低糖質ダイエットと低脂質ダイエットを比較して、結局どっちがいいの?という疑問に1つの答えを提供したいと思います。
私、別の記事で、
1番いいダイエット方法は?と聞かれたら。結論から言うと、なんでもいい。
大事なのは方法ではなく、
消費カロリー > 摂取カロリー
と言い切ってます。
これは間違ってないです。むしろ、これが本質だと思います。
でも、今回の記事は、低糖質ダイエットと、低脂質ダイエットに関する最近の研究論文を調査してみたら、おもしろい、でも少しこわい結果が見えてきたので紹介したいと思います。
まず結論。低糖質ダイエットvs低脂質ダイエット
① わずかに低糖質ダイエットが優位な結果が出ている = ほとんど差がないといってもいい
② 低糖質、低脂質どちらもダイエット効果はちゃんとある。
③ 低糖質は、LDLコレステロールの増加を誘起する可能性がある
私自身、低糖質ダイエットも低脂質ダイエットも両方体験して、両方とも痩せた経験をしていますので、①②については、まあそうだろうなという結論。でも③の結果については、少し驚きました。
最初に言っておかなければいけないのは、③から、じゃあ低糖質はだめだと言っているわけではないという点です。結局は程度問題です。研究結果から、低糖質でLDLコレステロールが増加するというデータは出ています。だけれども、それが人体に悪影響が出るレベルなのかどうかは別問題です。
私は、ダイエットは、その人に合った方法とバランスがとても重要と思っています。その人に合ったバランスは、自分の食生活の現状を可視化するところからはじまります。例えば1週間、自分の食事を記録してみてください。もし、糖質が過剰であったならば、見直すべきは、糖質ですし、脂質が過剰であったならば、見直すべきは脂質です。
見直す方法は、上記のリンク記事でも述べていますが、タンパク質、脂質、糖質のPFCバランスが目安になります。
あと、なんといっても、過ぎたるは猶及ばざるが如しです。ここは本当に大事だと思います。低糖質ダイエットも、低脂質ダイエットもやりすぎはよくないです。低糖質だって、低脂質だってどちらもダイエット効果があります。自分の身体と向き合って、バランスよく、健康的なダイエットを心掛けましょう。
とはいえ、学術研究では、上記のような結果がでているということで、実際に、どれくらい低糖質ダイエットと低脂質ダイエットに差があったのか、どれくらいのダイエット効果なのか、等々について紹介していきます。
低糖質ダイエットと低脂質ダイエットの学術研究結果
今回、ピックアップした論文は、下の3つです。幸いにも3つとフリーで公開されておりますので、詳細は、論文を参照していただければと思います。
論文 | 試験方法 | 期間 | 結果 | その他 | 所属 |
1 | ランダム化比較試験 | 6か月 | 有意な差がない | LCのLDLの増加効果に注意 | Stanford University Medical School |
2 | メタアナリシス | 6か月-24か月 | 低糖質優位 2.1kg | LCのLDLの増加効果に注意 | Faculty of Medicine, University of Oslo |
3 | メタアナリシス | 2か月-24か月 | 僅かに低糖有意 | ー | Leiden Universit |
引用
論文1:Obesity (2016) 24, 79–86
論文2:British Journal of Nutrition (2016), 115, 466–479
論文3:Am J Clin Nutr 2018;108:300–331
まず、難しい用語について
ランダム化比較試験(ランダムかひかくしけん、RCT:Randomized Controlled Trial)
要は、研究の対象となる人を、複数のグループにランダムに分ける研究手法で、このことにより、各群の性質が均等になり、客観的に結果を比較できるというものです。
詳しくは、こちらのサイトで分かりやすく紹介されています。
メタアナリシス
平たくいうと、複数の研究結果を統合し、統計解析などの手法を使って、再分析することです。結果的にはデータの母数が多くなるので、より信頼性の高い結論に結びつきます。
こちらも下記のサイトがわかりやすいとおもいます。
素人でもわかる!システマティックレビュー、メタ分析をわかりやすく解説
論文1の結果をまとめました。結果は、低糖質、低脂質ダイエットによる半年間の体重減少の結果です。
低糖質 | 低脂質 | |
インスリン抵抗性 | 9.6 ± 6.6 kg | 7.4 ± 6.0 kg |
インスリン感受性 | 8.6 ± 5.6 kg | 10.4 ± 7.8 kg |
結果からわかるように、低糖質、低脂質ともに、顕著な体重減少がみられておりますが、著者が結論付けている通り、両者の差は、有意とは言えないレベルです。
論文2では、11報のランダム化比較試験の報告結果をメタアナリシスしております。
いかんせんデータ数が多いので詳細は省きますが、11報の研究結果のうち、
7報 糖質制限がより優位
2報 脂質制限がより優位
2報 どちらともいえない
という結果で、差としては、2.1 kg分、糖質制限のほうが優位という結果です。注意しなければならない点は、11報の論文は、検証期間が6か月から24か月で異なっていることで、何か月で何kg差が出るという話ではないことです。
論文3では、さらに多く33報もの論文のメタアナリシスの結果がまとめられています。データの母集団としても1000を超えますので、それなりに信頼性のある結果がえられているのではないでしょうか。
この論文の良いところは、検証期間別に分けられていることです。
結論としては、ほんのわずかに低糖質ダイエットに有意な結果が得られていますが、検討期間が短期間(4か月以下)ではより優位に低糖質ダイエットが優位という点です。とはいっても、差はわずかに1kg程度なので、ほとんど差がないといっても差し支えないレベルです。
ここまで見た3報は、合計すると、45報の低糖質と低脂質に関する検討結果です。結果の大小はありますが、総じていえば、
低糖質ダイエットと低脂質ダイエットに大きな差はない。
これが結論です。
低糖質は、LDLコレステロールが増加?
では最後に、この気になる結果について、見ていきましょう。
まず、LDLコレステロールですが、これはご存じの方も多いと思いますが、悪玉コレステロールとも呼ばれ、その血中濃度が高くなると動脈硬化を引き起こし、さらに進行すると心筋梗塞や脳卒中を発症させることがあります。
ちなみに、検査としては、120 mg/dL以下であれば、基準範囲内。140 mg/dL以上になるようなら、生活習慣の見直しを要求され、医療機関の受信となります。
ここでは、論文1に載っている結果をまとめました。
LDLコレステロールの変化分 | 低糖質 | 低脂質 |
インスリン抵抗性 | 12.6 ± 21.0 mg/dL | -13.2 ± 20.1 mg/dL |
インスリン感受性 | 23.9 ± 46.6 mg/dL | -16.2 ± 27.8 mg/dL |
この表からわかるように、低糖質ダイエット群は、LDLコレステロールの値がダイエット前に比べて、増加していることがわかります。
標準偏差がかなり大きいので、人によっては、低糖質ダイエットによって、基準値以上になってしまう可能性も十分にあります。ただし、上記は検証3か月後のデータですが、6か月後のデータでは、LDLコレステロールの数値は、下がる傾向にあるようです。
逆に言うと、ダイエット直後などは、LDLコレステロールが、相当増加している可能性もありますので、その点どのような影響があるかについては、追加調査をしていきたいと思います。
低糖質ダイエットにより、なぜコレステロールが上昇しやすいかについては、糖質制限の代わりに摂取量が増えた脂質など、コレステロールの摂取が増えることが一因のようです。
この結果から言えることはやはり、
糖質制限ダイエットと脂質制限ダイエットでダイエットの効果に大きな差はない
ダイエットは、その人に合った方法と、どちらの方法に偏中しない、タンパク質、脂質、糖質のバランスがとても重要