私は、筋トレは最強のダイエット法だと思っています。
筋トレによって、増えた筋肉量が基礎代謝を増加させ、太っているかたは、より痩せやすい身体となり、ダイエットに成功した方は、より太りにくい身体となる。
でも、この部分って、なんか調べても、いろいろなことが書いてあって本当はどれが正しいのって思っている方が多いのではないかと思います。
筋肉1kgって、どれくらいの期間で、どんなトレーニングをしたらつくの?とか
筋肉1kg増えても13 kcalしか代謝が増えないんじゃあ意味ないんじゃないの?とか
今回は、これらの部分について、実際の学術研究の結果から答えに迫ってみたいと思います。
筋肉1kg増やすのにどれくらいの期間が必要なの?
よく参照されるのは、こちらのサイト(英語)にも詳細されているマクドナルド氏のモデルやアラゴン氏のモデルです。今回は、アラゴン氏のモデルを参照します。これによると筋力トレーニングにより
初心者(おおよそ1年)は、筋肉増加量が体重の1.0~1.5%/月
中級車(2~3年)は、筋肉増加量が体重の0.5~1%/月
上級者(それ以上)は、筋肉増加量が体重の0.25~0.5%/月 となるものです。
マクドナルド氏のモデルも数値としては同じような範囲を示しており、多くの方が参照しているということから、それなりに信頼性のあるモデルとして受け入れられているようです。
ここから推察するに、体重70 kgの男性を想定すると、
1か月に、筋肉が0.7~1.0kg増加
半年で、3.5kg~5.2kg増加
このあたりが目安になるようです。
しかしながら、この値は、あくまで、一般化したモデルの数値です。
どんなトレーニングしたらそうなるとか、どれくらいトレーニングしたらなどの情報はわかりません。
やはり、実際の具体例が知りたいということで、
過去の実際の研究結果から、
①初級者、中級者で、実際に筋肉の増加量が変わるのか
②筋トレの方法(強度、頻度)で増加量が変わるのか
について、具体例に落とし込みたいと思います。
初級者、中級者で、実際に筋肉の増加量が変わるのか
結論はYesです。
参照した論文は、下の2報です
Influence of High- and Low-Frequency Resistance Training on Lean Body Mass and Muscle Strength Gains in Untrained Men.
意訳:負荷トレーニングの頻度が、一般男性の徐脂肪体重と筋強度に与える影響リンクはこちら
High-Frequency Resistance Training Is Not More Effective Than Low-Frequency Resistance Training in Increasing Muscle Mass and Strength in Well-Trained Men.
意訳:アスリートにおける筋量と強度は、負荷トレーニングの頻度にさほど影響しないリンクはこちら
同じ研究グループからの論文で、負荷トレーニングの頻度と筋肉量や筋力に対する影響を調査しています。アスリートと一般男性とでそれぞれ一報ずつ論文になっています。おそらくは、大学院の学生が2人いて、それぞれ対象者をアスリートと一般男性に分けて、同じ研究をしているのかと思います。自然科学の研究室ではよくある話です。
この論文2報のすばらしいところは、
① 初級者=一般男性と、中級から上級者=アスリートで、筋増加量に違いがあるのか?
② 運動の頻度によって、筋増加量に違いが出るのか?
について、同時に知ることができる点です。
結論から言うために、両者の論文の結果を表にまとめました。検証期間は両者とも、8週間ということで、約2か月の結果です。ここでのトレーニングは、頻度の違いこそあれ、両トレーニングとも、週5日、計10~15セット/週の筋肉トレーニングです。1セットはMAX重量の70~80%の重量でつぶれるまでやる(おおよそ8回~12回の強度)トレーニングです。
運動初心者(18人) | 運動中上級者(23人) | |
高頻度トレーニング | 1.0 kg | 0.8 kg [95% CI: 0.0-1.6] |
低頻度トレーニング | 1.5 kg | 0.5 kg [95% CI: 0.0-1.1] |
95% CI:95%信頼区間 詳しく説明しませんが、本当にざっくり言うとばらつきはだいたいこの範囲ですよという意味です。
まずは、①運動初心者と、運動中上級者との違いから。
中上級者は、およそ7年±3年程度の経験者とのことです。思ったよりも大きくないですが、やはり運動初心者のほうが、筋肉の増加量は多いようです。
平たく言えば、
運動初心者のほうが、筋肉量は増えやすい
2か月で1kg程度の増加が目安(初心者)、中上級者はもう少し少ない
上で述べた通り、トレーニング量としては、週5日といえど、1日に2~3セットのみということなので、かなり軽いトレーニングですので、これより強度の高い運動の場合は、より筋肉量が増加することが予想されます。まあ家トレだとこれくらいの感覚でしょう。
② 運動の頻度による筋増加量の違い
結論から言うと差が無いと言っています。
高頻度トレーニングはイメージとしては、
1週目
月:ベンチ、デッドリフト、スクワット 1セットずつ
水:ベンチ、デッドリフト、スクワット 1セットずつ
金:ベンチ、デッドリフト、スクワット 1セットずつ
2週目 1週目と同じ
という感じで
低頻度トレーニングはイメージとしては、
1週目
月:ベンチのみ 3セット
水:デッドリフトのみ 3セット
金:スクワットのみ 3セット
2週目 1週目と同じ
という感じです。
両トレーニング方法も、総負荷量としては合わせているのでその部分注意です。
Increasing Lean Mass and Strength: A Comparison of High Frequency Strength Training to Lower Frequency Strength Training
Int J Exerc Sci. 2016; 9(2): 159–167 リンクはこちら
ちなみに別のグループでも同様の研究をやっていて、そこでもトレーニングの頻度による差はほとんど見られないという結果が得られています。同じく8週間のトレーニングで、筋量が1kg±1.78kgの増加ということで、上記結果とも一致しています。
ちなみにこちらは、週3回の実施で、各種目9セット、計27セット/週の筋肉トレーニングです。1セットはMAX重量の70~80%の重量でつぶれるまでやる(おおよそ8回~12回の強度)トレーニングです。こちらのほうが、より厳しいトレーニングとなっています。
筋肉がつくことによるダイエットへの効果は?
冒頭に書いた
1か月に、筋肉が0.7~1.0kg増加
半年で、3.5kg~5.2kg増加
これは、おおよそ、学術研究の結果とも整合しているようです。
筋肉1kg増えても基礎代謝としては13 kcal/日しか増えないということですが、半年で筋量として約4kg、約50 kcal/日の増分となります(もちろん、さらに筋トレに励めば、基礎代謝として、100 kcal/日の筋肉量の増加も望めます)
これは何度も繰り返しになりますが、1日で見ると大したことないかもしれませんが、月で、1500 kcal、年間で18,000 kcalの差になります。脂肪1kgのカロリーが7,200 kcalであることから、脂肪、約2.5 kg分の差につながります。
これは本当かなと思ったら、中年太りを想像したらイメージできるかもしれません。我々の身体は30代以降、年1%ずつ減り続けていくといわれています。
Strength and muscle mass loss with aging process. Age and strength loss
体重70kgとしたら、0.7kgずつです。5年で3.5kgです。まさに上の話とつながります。もちろん、運動不足や食生活の変化など実際は複雑な要因で決まっていくものですが、基礎代謝だけでも、年間16,000 kcalも減っているのです。食生活や、運動など、変えなければ、年間で2 kg近い脂肪を増やすことになってしまいます。
でも逆に、筋トレによって、年間1%の筋肉の減少を止めるどころか筋肉を増やすことができます。その結果、基礎代謝が上がり、よりカロリーを消費しやすい身体になるとともに、太りにくい体質へと変貌することができます。