こんにちは。モスです。
これから、筋トレ後の超回復について、何回かの記事に分けて、トピックスごとにまとめていきたいと思います。
今回のテーマは、超回復を最大化するサプリメントの摂取方法について。
特に、その主役となるプロテインにフォーカスして紹介していきます。
皆さんご存じの通り、筋トレ後の超回復は、筋力アップにとってとてつもなく大事です。
もっと強く言うと、超回復がなかったら、筋力アップしません。
ですので、この
超回復の効果をいかに最大化するかが、筋トレの成否を決める
といっても過言ではありません。
でもこの超回復に関しては、筋トレ後、48時間から72時間後に起きるので、筋トレは、それくらいの感覚をあけて実施するのがよい。とか、筋トレ後にプロテインをとるのがいいとか。情報はたくさんでてきます。
でも実際に実践しようとすると意外と悩ましいです。例えば
・ プロテインはトレーニング後一回飲めば十分なの?
・ 複数回飲む場合は、どのように摂取するのがいいの?
・ ほかにも、EAAとか、BCAAとかあるけど、どれがいいの?
・ パワーリフターは、プロテイン飲まない人も多いけどそれはいいの?
などなど。
上記のような疑問に、学術研究の結果から、答えを考察していきたいと思います。
記事の中ででてくる、サプリの量は、およそ、20~30代の男性(体重80kg程度)を想定しています。例えば体重が60kgと軽ければ、それに応じて少なくする。女性であれば、半分量にするなど、自分の必要な量に換算してください。
今回の記事は特に、下記のような人に読んでいただければと思います。
・ 筋トレしているけど、筋トレ後にどんなサプリとればいいかわからない
・ 筋トレ頑張っているんだけど、なかなか成果につながらない
特に後者については、問題は、筋トレそのものではなくて、そのあとの超回復がうまくできていない可能性が高いです。そういった方に少しでも参考になれば幸いです。
少しだけ、自分の話。
私自身も、筋トレを週に3回の頻度で実施していますが、これは、やっぱり超回復を意識しての回数です。もともとサプリメントについては、あまり気にせず、筋トレ後にのみ、プロテインをとっていましたが、現在は、ベンチ、ディップスなどの主要種目の2セット毎にEAAと粉飴、筋トレ後に、EAA、グルタミン、プロテイン、粉飴をとるようにしています。
これは、サプリの効果だけではないとは思いますが、EAAとグルタミンをとるようになった、ここ2か月の間に、ディップスが、自重+20kg(10REP)から、自重+50kg(10REP)まで、一気に増加しました。最近は特にEAAとグルタミンのコンビネーションに効果を実感しています。
前置きはさておき、さっそく、学術研究の内容とその結果について紹介していきたいと思います。
筋トレ後に、どのようにサプリをとるべき?
筋トレ前、筋トレ後、またその両方にプロテイン。1回あたり20g~40g程度を摂取している方が多いのではないかと思います。
ここでの疑問は、この1回で十分かということです。答えは、十分だけれども、超回復の効果を最大化するもっといい方法があるということです。
一気に摂取するよりも、20g/回を目安として何回かに分ける
オーストラリアの研究チームの下記の報告を紹介します
Timing and distribution of protein ingestion during prolonged recovery from resistance exercise alters myofibrillar protein synthesis
J Physiol 591.9 (2013) pp 2319–2331
彼らは、筋トレ後12時間の超回復期における、プロテインの摂取方法について検討しています。検討グループは3つ。それぞれ、8人程度の人数で、25±5歳の被験者です。
① 10g/回のプロテインを、筋トレ直後とその後1.5時間ごとに摂取する
② 20g/回のプロテインを、筋トレ直後とその後3時間ごとに摂取する
③ 40g/回のプロテインを、筋トレ直後とその後6時間ごとに摂取する
結論から言うと、②の20g/回のプロテインを、筋トレ直後とその後3時間ごとに摂取するグループが優位に高いタンパク合成速度となっています。
② 20g/回のプロテイングループは、①の 10g/回のプロテイングループより31%、③の 40g/回のプロテイングループよりも、48%の速度向上効果ということでした。
注意したいのは、どのグループも、平常時に比べて、タンパク質を取ったことで、タンパク質の合成速度が、88%~148%程度高くなっているということです。ここから言えることは、
筋トレ後のタンパク質は、量は少なくてもいいから最低限でも摂取しよう
これにつきます。
また下記の論文でも、筋トレ中のタンパク質の摂取と、そのあとの筋合成の速度をモニタリングしています。
Coingestion of Carbohydrate and Protein Hydrolysate Stimulates Muscle Protein Synthesis during Exercise in Young Men, with No Further Increase during Subsequent Overnight Recovery
The Journal of Nutrition, Volume 138, Issue 11, November 2008, Pages 2198–2204
ここでも、プロテインの摂取直後から、筋タンパク質の合成速度が、水飲みの場合よりも48%増大していることが報告されています。注目すべきは、トレーニング後3~4時間で、筋タンパク質の合成速度が水のみのグループとほぼ同じまで下がっているということです。
この結果からも、もう1つの論文と同様に、筋トレ後3時間後のタンパク質の追加摂取は意味がありそうです。
ここまでのまとめ
筋トレ中または、筋トレ直後には、20gを目安として、タンパク質を摂取する
また、その後、3時間後に追加摂取すると超回復の効果をより高められる
蛇足になりますが、少し面白いなと思ったことは、20gのタンパク質を取らないと、筋タンパク合成のスイッチが入らないから、意味がないという風に聞いて、そう理解していましたが、これは正確には正しくないということです。
10gのプロテインであっても、最適値ではないだけで、有意に筋タンパクの合成速度は高くなっていますので、十分に意味はあると思います。
就寝前のプロテイン摂取は、就寝中の超回復に有効
表題に関して、2つの論文を紹介します。結論から言うと、筋トレをした日は、寝る前にタンパク質の摂取をすると、より超回復を高められるというものです。
Pre-Sleep Protein Ingestion to Improve the Skeletal Muscle Adaptive Response to Exercise Training(論文1)
Nutrients 2016, 8, 763.
Protein Ingestion before Sleep Improves Postexercise Overnight Recovery, Medicine & Science in Sports & Exercise
August 2012 – Volume 44 – Issue 8 – p 1560-1569
doi: 10.1249/MSS.0b013e31824cc363
下の図は、体内における筋タンパク質の合成と筋タンパク質の分解の状態を表したものです。似たような図を見たことがある人も多いのではないかと思います。
図 筋タンパクの合成と筋タンパクの分解の拮抗
論文①から引用
体内では、筋タンパク質の合成と分解が拮抗していて、これを繰り返しながら、筋肉が少しづつ新しく更新されているというものです。要は、食事やサプリなどで、タンパク質を摂取すると、筋合成が優勢になり、タンパク質の原料となるアミノ酸が少なくなると徐々に筋分解が優勢となります。
就寝中は、いわば、タンパク質の摂取のない時間が長時間続きます。せっかくの超回復したい時間に、体内に筋タンパク質をするのに十分な量のアミノ酸がない状態が続きます。
これらの論文が言いたいことは、就寝前にタンパク質を摂取することで、就寝中の超回復を最大に効率化できるのではということです。
論文の結果をまとめると、以下の通りで、
プロテインあり(40g) | プロテインなし | |
筋タンパク合成速度 | 311 ± 8 umol/kg per 7.5 h | 246 ± 9 umol/kg per 7.5 h |
プロテインネットバランス | 61 ± 5 umol/kg per 7.5 h | -11 ± 6 umol/kg per 7.5 h |
就寝前のタンパク質の摂取によって、就寝中7.5時間のタンパク質合成、すなわち超回復がより効率的に起きていることがわかります。特に重要なことは、筋タンパクの合成と分解のバランスのことで、就寝前のタンパク質の摂取が無いグループでは、就寝中は少し分解側に傾いているということです。
紹介した論文では、40gのプロテインということでかなりきつい量ですが、同研究グループが、30gのプロテインでも同様の研究をしており、それによると、ほぼ同程度のプロテインネットバランスが得られていることから、それよりも少ない量でも、十分に意味があるといえるのではないでしょうか。
筋トレをした日に就寝前に30g~40gのタンパク質を摂取することにより、超回復の効果をより高めることができる
筋トレ後にどんなサプリをとるべき?
ここは、非常に難しいところです。調べてみると情報もとにかく膨大です。また、特にEAAに関しては、2019年、2020年でもいろんな観点で研究している論文がたくさんでているので、まだまだ理論が発展しそうな雰囲気さえあります。
タンパク質、EAA大きくこだわる必要はない。ただしトレーニング中、後にきちんと摂取しよう
そういうことなので、ここでは、1つ1つの論文を説明しながら紹介はしません(引用はします)。まず、関連する20報くらいを読んでみたところから、私の認識としては、タンパク質だったり、EAAだったりに大きくこだわる必要はないと思います。
基本的に、タンパク質は、20種類のアミノ酸の組み合わせからできています。タンパク質は体内で、アミノ酸に分解されて、体内に吸収されます。
EAAはEssential Amino Acids(必須アミノ酸)の略で、文字通り、上記、タンパク質を構成する20種のアミノ酸のうち、体内では合成できない9種のアミノ酸のことです。
タンパク質を摂取すれば、体内ではEAAと非必須アミノ酸へと分解されるので、要は、摂取する形は違えど、体内では同じということです。
なぜ、EAA以外の11種類のアミノ酸が必須ではないかというと、体内の代謝によって合成できるからです。これは、この章の「どんなサプリメントをとるべきか」を考えるときに基本となる考えだと思います。
Essential amino acids and muscle protein recovery from resistance exercise
Am J Physiol Endocrinol Metab 283: E648–E657, 2002
Nutritionally non-essential amino acids are dispensable for whole-body protein synthesis after exercise in endurance athletes with an adequate essential amino acid intake
Amino Acids 50, 1679–1684 (2018)
詳細は割愛しますが、上記の論文では、トレーニング後のEAAや非必須アミノ酸(NEAA)の摂取に関して報告しています。結果としては、NEAAは、十分なEAAが摂取されていれば、必ずしも必要ないというものです。
逆に言うと、筋トレ後にしっかり超回復したいならEAAをしっかりとりなさいということです。
プロテインやEAAはタイミングや体の負担を考えて使い分けよう
プロテインも結局は体内で、必須アミノ酸(EAA)と非必須アミノ酸(NEAA)に分解されるから、EAAと一緒みたいなものと書きました。
ただし注意したいのは、プロテインは、吸収するためにはアミノ酸に分解する必要があるので、多くとりすぎると肝臓などに負担がかかってしまいます。
また、これまで紹介した論文でも示されていましたが、プロテインは、吸収(筋タンパクの合成速度が平常時に戻るまでの時間)に3~4時間だったのに対して、EAAは1~2時間程度です。
プロテインとEAAの違いをまとめてみました
プロテイン | EAA | |
目安の摂取量(1回あたり) | 20 g | 10 g |
吸収の速度 | 遅い(3~4時間) | 早い(1~2時間) |
身体への負担 | 比較的大きい | 比較的小さい |
値段 | 安い | 比較的高い |
これらの特性を考えて、使い分けをするとしたら、例えば、下記のような形が考えられると思います。
EAAは
・ 筋トレ中の主要種目のメインセット間に積極的に筋タンパク質合成を維持したい
・ 筋トレ後速やかに超回復モードに移行したい
・ 肝臓に負担をなるべくかけたくない。でもタンパク質(のもとであるアミノ酸)が必要
プロテイン
・筋トレ前中に飲んで、筋トレ中のプロテインバランスをポジティブにしておきたい
・筋トレ後の超回復をしっかりと維持したい
・筋トレ日の超回復を就寝中もしっかりと維持したい
最後にまとめ
超回復を最大化するサプリメントの摂取方法について、学術研究の結果を引用しながらまとめてみました。
基本的な考え方は、
筋トレ中または、筋トレ直後には、20gを目安として、タンパク質を摂取する
また、その後、3時間後に追加摂取すると超回復の効果をより高められる
と
筋トレをした日に就寝前に30g~40gのタンパク質を摂取することにより、超回復の効果をより高めることができる
の2点です。プロテインやEAAなどは、吸収されやすさや体への負担なども考慮しつつ、うまく使いわけてみるのが良いかと思います。
最後、繰り返しになりますが、超回復を最大化するために、やっぱり重要なことは、筋トレ中、筋トレ後にしっかりと必要な量のタンパク質(もちろんそのほかの栄養素も)をとることだと思います。
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